ウィーン・フィルのメンバーとの室内楽コンサート

以前から親しくさせていただいているウィーンフィルの首席奏者ペーター・シュミードルさん、フリッツ・ドレシャルさんとの東北でのコンサート、おかげさまでうれしいこともいっぱいあり、大変楽しいツアーとなった。

シュミードルさんとは7年ぶりの共演、ドレシャルさんとは10年ぶりの共演、トリオとしての共演は15年ぶりになるのだが、全くそのブランクが感じられない。お2人とも世界のトップランクの演奏家だが、お人柄も素晴らしい。私は若い時に彼らから実に多くのことを学んだ。それは演奏家としての「イロハ」というか、プロの音楽家はかくあるべきということである。彼らは本当にコンサートが大好きで、人生そのものであり、いつも活力を持って輝いている。コンコルドが飛んでいたころは、時差を使って、アメリカとヨーロッパで同じ日の同じ時間にリサイタルを実行してしまったり(笑)、前向きで疲れを知らない情熱、そして共演者にはいつも紳士的であり、演奏には音楽の喜びが満ちて温かい。そして音楽のビジネスのあるべき姿を、私はしっかり勉強させて戴いた。彼らはいつも平常心で普通に構えている。芸術家は内容とか表現とか、深遠なものに憧れこだわってしまいがちなのだが、本質的には「音さえ出せばそれがいつでも立派な音楽(それも伝統の香り豊かな)として成立する」のが1つの理想の姿でもある。彼らの穏やかさは、それができる自信と誇りがあるゆえだと思う。気難しい注文の多い演奏家なんていうのは、実力不足の現れだということも心底思い知らされるね。

まずは仙台のコンサート、私は朝7時半の新幹線で仙台に向かい、会場で10時からリハーサルという強行軍だ。15年ぶりでも問題もなく無事終了。大好きなブラームスのトリオや良い曲ばかりが並んでいるのでとても楽しい。2時間みっちりとリハーサルを行い、そのあとは仙台で一番有名な酒蔵の「勝山」のホテル「勝山館」で昼食となった。
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a0041150_23354330.jpga0041150_9502594.jpgなかなか趣あるホテルで、洋食のレストランは輝くシャンデリアが並んで、とても美しく素敵だった。ただコンサートが4時半からとなると、残念ながらゆったり食べている場合ではない。簡単なコースを戴く。

フレッシュなサラダのあとはチーズのリゾットをセレクト。主催者のかたはもっと豪華なメニューを勧めてくれたのだけれど、絶対にこれが良かった(笑)。いわゆるちょっとベタベタした感じのもので、ポテトのチーズ焼きのような雰囲気なのだけれど(笑)それは私の想像していた通り。ホテルのレストランとはどこもこういう感じで、しっかりお米が立った本格的なものだと芯があるので、本番前に消化が悪い(笑)。お母さんが作ったようなこういうのも嫌いじゃない。なんてったってチーズ好きだからね(笑)。お味はマイルドで美味しかったし気分も落ち着けた。大満足。主催者のかたのご配慮に大感謝!

コンサートはアットホームな感じで温かく迎えてくださり、とても楽しく終了!お茶目なシュミードルさんのしぐさもウケていた(笑)。常盤木学園内のホールだが、とてもナチュラルな響きの感じの良いホールで演奏していても楽しめる。こういう良い設備が使える学生さんたちが羨ましいね。左下の写真は常盤木学園のブログから拝借。学生さんたちの生き生きとした毎日が伺える楽しいページだ。

a0041150_1224462.jpgウィーンの音、ウィーンの音楽は理屈ではない。そう言い切ってしまうと乱暴なのだが、「音楽を純粋にとらえて、そこに無条件に喜びを発見して弾く」とでもいうことだろうか?これがまたクラシック演奏の基本であり、NHKで今再放送中のシフのレッスンなどを見ていても十分に感じられる。

シュミードルさんは「斎藤は本当に良い音楽家だ。演奏していると我々ウィーン人と同質の音楽を感じることができるんだよ。」と何回もほめて下さった。うまいとか何とか言われるより、こういうほめ方をされるのが一番幸せだ。ヨーロッパの伝統音楽なのだから、本来その伝統と遠い日本人であることが最もどうしようもない部分で、そこに根源的なお墨付きを頂けるというのは、私たちにとっては何よりの勲章だ。伝統的な演奏ができる名手たちとの共演は、自分の積み重ねてきたものに確かな答えが戴けるうれしい時間である。

ウィーンフィルのメンバーとの共演は色々あったし長いから、私自身もとてもやりやすく、昔から聞いていた懐かしい節回しに触れる思いがして、それも幸せに思える。やはりこうした経験を積むのが何よりも大切なことだ。ここが運だと思う。そういう共演に恵まれなければ話にならないし、最初のころは当然不慣れなのだから、お客様や批評家が長い目で温かく育てて下さらなければ成り立たない。本当に多くの方に支えられ、育てて戴いたのだと、感謝することばかりである。

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a0041150_957456.jpg夜は仙台の日本オーストリア協会のレセプションに招かれて、美味しいオーストリアワインとフルコースを(笑)。ここのワインが偶然にもドレシャルさんが個人的に親しいワイン屋さんのもので、それも大いに盛り上がる。また私は以前にリサイタルでお世話になった「ピアノアッセンブリー」の仁科さんに10年ぶりに再会!こちらも楽しかった。

コースもホテルのものとしては凝っていて、前菜も食感の良い「2種のキャビアと鮑の柔らか煮」、臭みのない「タスマニアサーモン」等スッキリ戴ける。一番美味しかったのは「カボチャの冷製スープ」!スープ自体も美味しいのだが、「坊ちゃんカボチャ」がそのまま器として使われそれも戴ける。この熟したカボチャが絶品と言うほどに旨い。この同じお皿になぜか熱々のコンソメスープがフルートグラスで添えられて(笑)これはちょっと意味不明!逆に残念だったかも。これさえなければ(笑)!コンソメスープって難しいよね。なかなか銀座の「パリの朝市」のようなわけにはいかないものだ。あそこのコンソメスープは旨い!さてメインのお料理はお魚(まこがれい)のほうが美味しかった。

皆さんの心づくしの会で素敵な時間を戴き本当に感謝である。ありがとうございました。このあとすぐ車で一関に向かい「ベリーノホテル一関」へ。忙しい1日だったがとても充実していたし「ベリーノホテル」のお洒落なサロンで戴いたフルーツでリフレッシュ!

a0041150_109585.jpg翌日はホテルで朝9時半からリハーサル。実は前日とプログラムが少々変わる。まずは8時過ぎに朝食を戴く。「ベリーノホテル一関」は私の大のお気に入りだ。お部屋も美しいが湿度などもきちんと管理されていて細やか。朝食は和食を選択。この温めながら戴くものはよくありがちな鍋や煮物ではなく「焼き物」であるのが素晴らしいと思う。温泉旅館じゃあるまいし(笑)朝から鍋というのは、何か精神的にももたれるような気もするよね。だから香ばしい焼き物はメニューとして朝食には相応しい。また「きんぴらごぼう」が良い。お味もだが、太さが実に繊細でとても美味しく戴けた。

またBGMにはドホナーニが編曲したピアノ曲が!さすがにセレクトが凄いね。これが気に入っちゃった~!楽譜は持っているので、ぜひ弾いてみたい・・・・とか思った。

リハーサルは11時半までシッカリ!そのあとシュミードルさんたちはすぐ昼食に行かれたが、私はいくらなんでも時間が近いので12時半ごろにした。それまでは個人練習。実はね(笑)ちゃんとおなかをすかしてから戴きたかったの。というのもここ「ベリーノホテル」の和食は絶品だから。おそらくこの和食が分離して東京の表参道あたりでオープンしたとしても十分にやっていける!!そんなレベルだ。ホテルのレストランの価値観で推し量れる範疇では大きない。とても楽しみにしていた。

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a0041150_10165631.jpgでも演奏は3時からということだから、大量には戴けない!ホント残念だ(笑)。

まずは大きなザル籠の中に盛りつけられた「鱧の焼き物」。「鱧」は舌平目のムニエルを思わせるほどに絶妙の軽さとニュアンスがゴキゲン!お造りは三陸の「ウニ」がメイン。これは旨い~!文句無し。また地味なことながら「刺身のツマ」のお大根が繊細な細さで旨さを増幅させる。刺身もただナマで出すだけではなく、所々に仕込みの後がある凝ったもの。

サラダも春雨の歯ざわりも絶妙。涼やかな食感を味わえる。そして炊き込みご飯は「みょうがご飯」だ。私はどちらかと言えば「みょうが」は嫌いだ。でもこんな風に鮮やかに料理されると、全然平気。みょうがの香り、独特な辛味が清涼感を持っていて、この季節に実に良く合う。嫌いな食材なのに大喜びで戴いてしまった!超旨い!弾く前だったからおかわりなしで終了(笑)。

「ベリーノホテル」のこの和食は今は予約があって営業するという形をとっている。なんかもったいないような気もするのだが、こういうきめの細かいやり方だから質も保てるという気もするね。でもこれは是非多くのかたに賞味して戴きたい和食。普通に宿泊していたら、きっとわからないでスルーしてしまうだろう。それは残念すぎるよ(笑)。

a0041150_10312415.jpgさてコンサートは中尊寺の本堂で行うというもの。中尊寺が世界遺産に選ばれることを祈念して行われた。そして夜は夜で「ベリーノホテル」でも別プログラムで6時半からのコンサートが。そしてさらにディナーの前にミニコンサートという流れだ。

これはJTBの企画でツアーが組まれていて、企画は本当に素晴らしいのだけどツアーの代金が10万円ということで、お客様がどれだけいらしてくださるのかがとても心配だったのだけれど、大変ありがたいことに多くの方がご参加くださった。感謝いたします。中尊寺にはすばらしい能楽堂はあるのだけれど、この本堂に100人を超える人たちが集まり、コンサートが行われたのも初めてのことだという。

もちろん冷房なし(笑)。暑さが一番の心配ごとだったのだけれど、風があってラッキー!雰囲気も良く何の問題もない。「ひぐらし」や「蝉」が演奏に対抗するかのように一斉に鳴きだし(笑)、まさに自然の中の音楽ということで、お客様にも大変喜んで戴けた。

「あなたのために書きました」と貫主様から書を戴く。中尊寺では泰衡の棺にあった800年前の種から近年、蓮の花が育ち花開いたそうなのだがそれに例えて「美しきものは時空を超えて人の心を動かす」というようなお言葉だった。コンサートの後は「金色堂」も散策。

ホテルに戻って時間はほとんどなく次のコンサートに突入、お客様はさらに増えて200人になっていた。よく考えてみれば大変ハードなスケジュールながら、疲れを感じることもなく、おかげさまで大成功のコンサートになった。お客様の笑顔に支えられたのだと思う。

a0041150_10323938.jpga0041150_10325413.jpg中尊寺からずっとシュテファン=バストル駐日大使もご来席。大使もこの日本文化の深い空間で、ベリーノホテルの美味しいお食事とともに3回もコンサートを聴いたことを「特別の経験」と、お喜びのご様子でスピーチをされていた。私は大使に演奏を聴いていただいたのは2回目。前回はヤマハホールでのセドフさんとのコンサート。「心に染みる美しいピアノでした」と前回のことも良く覚えていてくださって、とてもほめて戴いた。写真は大使ご夫妻とシュミードルさんとドレシャルさん。

演奏後は私たちも一緒にディナーで大変和やかなひと時。私が弾いたグリーグのピアノ協奏曲を聴いてピアニストになったという人、以前からのリピーターのお客様、東京からツアーでいらしたお客様からも「来た甲斐がありました」とお声をかけて戴き、こちらも大感激。お食事も美味しく戴いた。

というわけで大変充実した楽しい時間を過ごさせて戴いて、大感謝のツアーだったのだが、シューマンのレパートリーは水を得た魚のように、かなり良い演奏だったと思う。やはりシューマンという作曲家はピアノの魅力を巧く描けるすばらしい作曲家だと改めて感じた。考えてみると私もよほど自分が調子が悪くない限りは(笑)、シューマンではこれまでも自己満足と(笑)それなりの評価も戴いてきたような気もする。もう少し今後レパートリーを増やしてみようかな~、よし、そうしよう!ドレシャルさんからも「サンキュー、曲の良いイメージをもらえて幸せだった」と言われて幸せだ。ドヴォルザークもとても良い空気だったね。私も希望に燃えていた若いころの気分に戻ったような、音楽に対するフレッシュな情熱を戴いた。心から感謝!演奏家とはかくあるべきだね~。引退同然のような人はやはり問題があるからそういう状態なのであって、活躍している人にはちゃんとそれだけの理由がある。これからもますます積極的に頑張っていきたいと思った。

a0041150_10481758.jpga0041150_1048316.jpgさて、これでひと段落。かなりの数のレパートリーを抱え忙しかった~。今回出かけていくときもあわただしく、東京駅でとてもまずい駅弁を食べて、不幸な気持ちだったよね(笑)。何とかの釜めしとかも(笑)私はダメだ。もちろん好みもあるけれど「駅弁を楽しみにしている」などと言う人の気がしれない。友人の山本祐ノ介さんは「冷たいご飯がいやだ」と言って、急いでいるときはスタンドで済ませていたりしているが、それも正解である。ただ地方に行くと良いお弁当があるのも確かで、北陸や仙台、神戸などには美味しいと思ったものもある。そんな中、一関は例外的に駅弁の美味しい駅。コンサートの後は楽しみに買って帰る。駅の売店のお弁当写真がもう少し美味しそうだともっと良いね。でも大丈夫。お肉の質とか、お弁当にしてはとても良いものを使っていていつも満足。今回は「しょう月堂」の「ローストビーフ弁当」。玉ねぎを混ぜたご飯も美味しいね。

なおコンサートの模様は朝7時のNHKニュースでしっかり放送されていた。とり上げて戴いたのもうれしいが、わりと長い時間だったのでさらに感謝!
by masa-hilton | 2010-07-26 11:15 | 日々の出来事
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