第57回東京国際ギターコンクールの審査

昨年に引き続きまして、2014年度の東京国際ギターコンクールの審査に行って来ました。気持ち的には昨年も書きました通りで全く同じです。ギターの専門家じゃないんだから・・・・ご辞退したいというところなのですが、「ギタリストでない人の音楽的な意見が聞きたい」という主催者のご熱意と、長年私の師匠の田村宏先生がやられていたという事実(笑)。師匠の後を受けてお引き受けした次第です。

ギターの国際コンクールの中では老舗でもあり、世界的にも権威のあるコンクールで、ピアノのそこらのコンクールよりもかなり重要ですし、実際に演奏がすばらしい!今年も心から感動しました。

今日は人形町は何かのお祭り?江戸っ子の私は賑やかなのは好きですが、並んで「うどん」などを食べるのは苦手なんだな~。横目でちらりと見つつ、目的地の白寿ホールに急ぎます。
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けっこう早く着いたのに、もう審査員は勢ぞろい。今年は去年欠席だった福田進一さんもいらっしゃり、昔テレビで共演した話なども!お弁当は浅草の鮒忠本店。ピアノの審査員とは違って、ギターの先生たちは皆さん和気あいあいで和やかで楽しい。「この弁当は酒がなきゃ食えないような感じだね」「早くビールが飲みたい」と大笑いされていました。
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もう結果はご存じの通りです。皆さんすばらしかったですね。パリで学ばれた外国人お二人は、表現力も柔軟で優れていましたが、それはそれとして、小暮浩史さんが大変充実していたので、ぜひぜひ上位に行って欲しい!できれば優勝でも!と考え1位をつけました。昨年の彼の演奏に比べ、ピアニストの耳にも今年は一段と様式の捉え方や邦人作品での風土的な情感ででも、存在感が光っているように感じました。結果3位だったのですが、点数は僅差で1位と2位、2位と3位それぞれ0.5点差ということでしたから、審査員室では「1位が3人でもおかしくない」という声もあったぐらいです。さらなる飛躍を期待したい見事な実力派です。
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ピアニストの耳と言いましたが、福田さん曰く、ギタリストの耳だと細かいテクニックが気になってしまうこともあるから~とのこと。ピアノの場合だとどうでしょう。第一に「ヨーロッパ音楽の伝統の継承」を神経質に考えますから、より理屈っぽいかもしれません(笑)。例えば最初のアメリカの人。まずはとても音楽的に、よく歌えていてすばらしいと思いました。多分ギターという楽器ではかなり優れた演奏力なのだと思います。ただ、ピアニスト耳だとスペインの音楽、ドイツ音楽・・・・それぞれの様式での音色・色彩感の違いが少なく、ワンパターンに聴こえて来ます。ピアノの審査だったら出来不出来にかかわらず、問答無用に低い点がつくパターンです。一応、他の審査員にもご意見を聞きましたが(笑)「それは正しいよ」と言われたので考慮に入れました。続く斎藤優貴さんはお若いのに、現在の自分をのびのび表現され、ウォルトンの表現などはイギリス音楽ですから妥当ですよね。将来が楽しみ!ということもあり上位の点をつけました。

結果が1位2位のチャバさんとジャラさんは、課題の邦人作品を暗譜で弾かれただけでも、謙虚で崇高な魂を感じさせてくれましたね。お二人ともに音楽の真の愉しみを感じさせてくれる見事な演奏でした。でも採点をしなければいけないので・・・・・。ピアニスト耳での大きなマイナスポイントは、ジャラさんがスカルラッティのソナタを弾かれたこと。これがピアノでも弾かれる作品で、まずは統一性のあるトリルでないとピアノではアウト。ギターの場合はわからないので福田さんに聞くと「まあ、スカルラッティをギターで弾く時点でね~」ということでしたが、荘村さんは「技術的に入れたくても入れられないところがあるんだけど、本当は厳密であるべきだよね」、兼古先生は「様式は大事だからね」とおっしゃっていたので考慮に入れました。またポリフォニー音楽から踏み出して新しい器楽の音楽スタイルの実験を行い、当時はその先駆者だったスカルラッティならではの表現というのがあり、そういうのもピアノ耳には無視されているように聞こえて、例えばその部分、ピアノだと来日した時のホロヴィッツの、魔法のような音の変化とディミヌエンドに比べたら、どうしても平板に聴こえてきますよね。そんな様式的なこともあり、私はチャバさんを上位にしました。

ただジャラさんはロドリーゴの「トッカータ」を弾きまして、これがメチャ難曲で「普通は弾けない!」ような曲ということで、ギタリストの先生方は興奮されていました。作曲家がピアノで作った作品ということで、楽譜面はとてもピアノ的に書かれているので「ピアニストからは難しそうに見えないでしょ?」と(笑)!確かに!そんなこともあってか、兼古先生は小暮さんにも「もっと難易度の高い曲のプログラミングがいいね」とアドバイスされていましたね。最近のピアノは難しい曲を弾いてもアピールは出来ない状況にあるので、ここは楽器の事情の違いを感じました。

福田さん曰く「最近はユーチューブがあって、他人の指遣いを盗めるからドンドンみんな難曲を征服しちゃうんだよね。凄いことだけど、その弊害でサウンド(音、音色)はスピーカー音のようにみんな平板になって来ちゃっているんだよ。」とのこと。なるほど!人マネや安易な勉強では得るものも少ない、人から影響を受けるのはあたり前だし伝統芸術なんだから継承も必要ですが、自分で成熟させてこその芸術ということですね~、それはどのジャンルも一緒です。日々精進ですね。

またギターを抱きしめるように、ベースのように立てて弾いている姿は私なんかには美しくも見えますが、小原先生曰く「あれは音が小さくなるだけよ」と一刀両断(笑)。そうなんだ!確かにそうだ。「白寿で大きな音で聴こえる人は日比谷公会堂じゃ音が通らないかも、また日比谷で通る人は白寿では不明瞭になったりする。白寿ホールでもリサイタルと録音じゃ弾きかたが違う」と福田さん。ギターはやはり繊細な楽器のようですね。「一昔前の巨匠たちは大きな音ではなく、小さな音で美しい表現を求めようとしたし」と先生方は語っておられました。時代の求めに応じて演奏者もスタイルを研究しないといけない!ということでもありますね。

色々なことをお話出来て今年も楽しかったです。

それにしてもギタリストの皆さんは、本当に仲良しで家族のよう。すばらしいことです。そしてこのレベルの高いコンクール、心からブラボーです。今年も素敵な1日になりました。
by masa-hilton | 2014-12-08 13:06 | 日々の出来事
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