ピティナ グランミューズ全国決勝大会の審査

18日、19日と豊洲でピティナのグランミューズの全国決勝大会。この審査を頼まれました。わりと急でしたね、フランスにまでメールが来て、ラインで話したりで打ち合わせ。ふたを開けてみると若林顕くんはじめ、懇意にさせて頂いている面々。今井顕さん、相澤聖子さん、そしてお久しぶりの秦はるひさんや、1回お約束に穴をあけてしまって、多大なご迷惑をおかけした浜口奈々さんとも再会。お優しいのですぐ許して下さったが、お詫びできて良かったです。
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林達也さんは2回目か3回目、佐々木邦雄さんと奈良井巳城さんはお初。審査は楽しく。わいわいと。

コンクール審査は朝が早い!これに弱い。日本でヨーロッパ時間で暮らすような深夜型の私は、外国でこそ時差なく暮らせますが(笑)、こうしたコンクールの時に時差が起こるわけですよ(爆笑)。あと、普段ほとんど教えていないので、他人の演奏を長く聴くことがない。これも苦痛!これはね、相手がリヒテルでも苦痛ですよ(笑)。コンテスタントに限った話ではないのです(笑)。あとは・・・腰が痛くなりますよね。いや、ホント。行儀が良くないですが、寝返りを打つように・・・それもついつい、ため息つきながら(笑)姿勢を直し直しですね。しんど。

しかし豊洲は近いから助かった。タクシー移動もOKとお許しを戴いたので、タクシー15分で到着だ。
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審査は丸二日、65人(組)、7つのカテゴリーで入賞者を選出。私の点数で入賞者を大きく外したのはYとA1のカテゴリー。私は各部門入賞者が3人ということで、極力その3人だけに90点をつけるようにしました。いつもと同じです。良い点をつけた人、イコール入賞する人というつけかたです。なので、私が外している場合、他の人に良い点をつけているということですから、その人にとっては今後の励みにしていただければ!と思います。少なくても私が応援団ですよ、ご迷惑でしょうが(笑)。何しろ結果は絶対のものではないですから、一喜一憂はなさらなくて大丈夫です。その入賞者、今回の私は3分の2ほど的中させました。審査員は9人もいる中での話ですからOK、それはすなわち、審査が問題なく進んだことを意味しています。

今井さんが講評で、自分なりの世界を楽しめば良いみたいな話をされましたが、確かに「楽しみ」という面ではそれはストレスなく、良いことではあるんだけど、バーンスタインが言うように「音楽には良いか悪いかの2種類しかない」という意味では、それでは収まりません。私はいつものように、きちんと様式を考えて伝統的な解釈を優先して採点しました。踊れないようなワルツならば、いかに優れたテクニックでも、クラシック音楽ならば価値はゼロ。伝統的な解釈であること、ベルカント的な歌がレガートに歌えるのか?音色面の多彩さのことなど、普通に審査では大きなポイントになります。今回の審査の傾向として、技術的に見事に弾き切った人に加点されたように思いました。アマチュア部門でもあるグランミューズなので、それはまた1つの注目ポイント!もちろん、全然文句ありません。

A1は2位になられた人にだけ90点をつけました、あとは混沌とした印象だったからです。その人のリストなど、バランスの取れた申し分のない良い演奏でした。惜しいと思ったのは、マズルカを弾かれた人。4曲続けてワンカラーになっていたのと、特に4番の解釈が大きく違っていましたね。チェレプニンのほうは大変素晴らしかったです。グラナドスの人は音色が明るく、陰影を描ききれず曲の持つ様式とは異なって感じました。ファウストのワルツはロマン的な物語が感じられなかったのと、ラフマニノフは速すぎてロシア音楽の香りが失われたように思い、スカルボとサンサーンスは、フランス音楽の音色の多彩さと立体的な表現、洗練さが薄く感じられて点を抑えました。が、もちろん、入賞された人は演奏力があります。

Yでの私の高得点は、1曲1曲のキャラクターを弾き分けたショスタコーヴィッチの前奏曲の人(こちらは3位になられました)、そして「ムジカナラ」を弾かれた人は、誰よりもこの曲を「自分のものにしている」ところが素晴らしく、バルトークのソナタを弾いた人は、多くの場合「金属的」になりがちな「バルトークの強打」やリズミックな部分が「木質」であったことが素晴らしいです。1位になられたハンガリア狂詩曲の人のテクニックは文句なく凄味もありましたから、もちろん素晴らしいのですが、私にとってはバルトークの「木質」のほうが価値があったということです。プロコフィエフの6番のソナタも上手でしたが、緊迫感と言いますか、たたきつけられる和音は不安を呼び、絶望的な悲劇を予感させる方向でないと、曲の様式と合わない。ここが気になりました。以前もそれ、ありましたね

他のプロコフィエフの方もそうです(すべてのカテゴリで言えることです)。ロシア音楽の濃厚な表情よりも、感覚的な表現が皆さん優先されていて、それはあまり良くないです。スクリャービンはそこに官能的な要素も加わるので、さらに濃厚に、具体的にはもっと完璧なレガートで太く歌っていかないと魅力が伝わりません。

総じてYとJはレベルが高かったです。グランミューズと言っても課題曲がフリーなだけで、内容的には普通のコンクールと同じ状況でした。

Jは私の高得点3人が入賞。3人ともすべてにバランスがとれた良い演奏をして、ピアニストとしての「質の高さ」が感じられました。ここでサンサーンス「アレグロ・アパッショナート」を弾いた人はギリギリセーフでしたが(笑)、この曲はよくアーティキュレーションが間違えて演奏されます、そこがいい加減になりやすい。普通に左手に合わせてペダルを踏むと、右手のアーティキュレーションが壊れ、別の曲となってしまうのです。難しいですが、最上級の演奏は出だしの主題はノーペダルです。それでいて色彩感を出してこその曲です。

アーティキュレーションは非常に大事で、古典はもちろんですから、ベートーヴェンはこれがほとんど命取りになっていますね。ショパンでもそうですが。

A2はヴァインのソナタは良く整理されていて、説得力がありました。リゴレットもよく歌えてましたし、このお二人は文句なく、高得点をつけました。また難しいアーティキュレーションの問題など、ちゃんと折り込まれていたので、バラードの1番の人も良いと思いました。こういう曲をコンクールでちゃんと弾けるのは価値があります。ただ他の審査員の何人かが「長く感じた」等と言われていたので、点が集まらなかったのだと思います。私が点を抑えたドビュッシーの人も、全然悪くはありません。ただ、やはりフランス音楽の多彩の音色などが様式として感じられなかったのです。でも、もしかするとピアノのせいかもしれませんね。

今回のピアノはファツィオリでした。このピアノ、基本の音色は非常にきれいです。でも音に色がなく、音色に変化を付けて弾くことは、我々でもなかなか難しそうな感じを受けました。なので、繊細な音色を要求されるフランス音楽を弾いた人には、非常に不利だったかもしれません。確かに、単色で一本調子に聴こえることが多い2日間でした。同じく、イメージ豊かな演奏も少なかったです。ピアノをうまく弾く、ちゃんと弾くとかではなく、なんかそれ以上のイメージや物語、そういうものを感じさせられることも少なかった。これも楽器の影響かもしれません。
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その点、Dの連弾ではわかりやすく、イメージを追いかけて楽しそうに弾いた2組が入賞。私の高得点と一致です。シャブリエの楽しい行進曲も良い感じでしたが、何しろ速い。あれは「楽しい行進」ではなく「苦しい競歩」のテンポですね、それがいけなかったと思います。

B2はレベル的にやや見劣りがしました。でもアマチュア部門なので問題はありません。なのでカプースチンの人がダントツでした、もう少しラストの部分がファンキーだったらさらに良かったと思います。私の嫌いなベルクのソナタ(笑)、曲が嫌いだとついつい点も低くなるのが人情?でもこれ弾いた人、難曲をよくまとめられていました!リストの伝説の人は、音楽に対して誠実な姿勢を持たれていることが素晴らしく、それがよく伝わってきてとても良かったです。チャイコフスキーはまず、メロディがレガートに歌われていないので、審査員も??な感じになってしまいました。多分難しい曲を選び過ぎですね。他の曲を弾かれていれば、良さが発揮できたかもしれません。ドビュッシーもミケランジェリでさえイマイチかもしれない1-4とか、選ばないほうが良かったですね。あの曲で、コルトーの魔法のような演奏の域に達することは超難しい。やはり選曲も大事です。

B1はクラシックな曲でのガチンコ勝負でしたね。クラシックな曲だけにラストに弾いた人など、ご自分の世界を持っていてリサイタルのようでしたが、コンクールでは、様式をはみ出しては点はあげられません。ブラームスのソナタの人もです。最初は良かったのですが、段々熱を帯びてきてスパーク!ラフマニノフもビックリ!プロコフィエフも道を譲るぐらいの曲に燃え上がりました。演奏会ならばそれも良いのですが、コンクールだと点は集まりません。そのブラームスのあおりを喰らって、次の「死の舞踏」の人も相当燃え上がっていましたが、あちこち破たんはあったものの、私はこれはヴィルトゥオーゾピースとしてアリと思いました。他の審査委員からはそうでもなかったですが、私は良い点をつけました。同じく破たんはあったものの、なかなか面白く聴かせてくれたスペイン狂詩曲も、同じ理由で私は高得点です。もう少し音楽運びがモタモタしなければ点が伸びたかもしれませんね。グラナドスは名演でした、でもそれ1曲だったので、ピアニストとしては片面しか見せてないということで、私はほんの少し点を抑えました。が、間違いなく名演です。スケルツォは構成よく素晴らしい、中間部がもう少し多彩にロマンティックであればさらに良いですね。プロコフィエフのサルカズムは文句がありません。音にも表情があったし、非常にバランスの取れた良い演奏でした。

豊洲シビックセンター、あまり響かずよく聴こえ、ピアノもファツィオリ。ここで弾くなら、くっきりとした構成の見通しの良い曲ですね。繊細なフランス物はかなり不利だということで(笑)。

1日めのお弁当は「金兵衛」の。出た~~~!嫌いなんですよね。
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やたらにしょっぱい。高血圧誘導弁当と呼んでいますが、今回は大丈夫だった。やればできるんじゃん「金兵衛」。
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逆におやつは強烈に甘いお菓子が出ます(笑)。かつて行列の有名なドーナッツですね。大学イモのような食感でした。
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2日目は仕出し弁当のようでした。
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審査が大変だった?と思われたのか、ピティナさんからお寿司が最後に出されてました(笑)。暑さも苦手なので、いつも体調がおかしくなるコンクールですが、冷夏のおかげで今回は大丈夫でした。コンクールも良いけど、受けている人を見ると人生の無駄してませんか?と語りかけたくもなります。ヨーロッパの音楽祭に参加して、一流教授や演奏家とのアンサンブルやレッスンの、自由で開放的な毎日の音楽三昧、当然うまくなりますよ。ここでの受講生たちの目を見張る上達度?成熟度?を目の当たりにすると、わずかな課題曲に縛られてのコンクールは、本質的なものとは明らかに逆行していると感じます。これからどのようになっていくのでしょうか?いずれにしても、音楽人生はけわしく大変・・・それは変わらないことですが。

by masa-hilton | 2017-08-19 23:14 | 日々の出来事
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