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お芝居見物

またしてもご招待状を戴いたので、サンシャイン劇場にお芝居見物に行ってきました。素晴らしい舞台でした。

麻実れいさん、金田龍之介さんの2人芝居「サラ」。伝説の女優サラ・ペルナールの回想を、ユーモラスかつ深く掘り下げた舞台で、今回で再々演。きっと本物のサラはもっと意地悪でわがままだったのだろうなと思いつつも、充実した演技を鑑賞してきました。金田龍之介さんの変幻自在の演技は、名人芸の域に達していました。

で、ボクは芝居ファンではないので、色々と考えさせられることが多かった。まずお客さんは良く反応して笑ったりしているのですが、ボクはまったく笑えない。泣いている人もいたし、感動してスタンディングしてた方もいましたがこちらはとても冷静な気持ちでした。演技者に不満があるわけではないのですから、ひとことで言えば「舞台とはこういうものか」という感じですね。感動と言うより「感心する」という感覚。不慣れと言えば不慣れな、その場所で自分を解放できないような感覚。ボクの個人的な問題です。

だからクラシックを聴きにいらした「特にファンでもない」方って、こんな感じなんでしょうね。考えさせられましたね。こちらは大サービスのつもりでも、こういうお客様に曲をたくさんやっても疲れさせてしまうかもしれないし、どんな優れた演奏でもあまり難解な曲が続けば、意味も成さなくなって来るかもしれません。プロから見たって、誰もが知っている通俗曲をうまく弾ける人こそ真の実力者なわけですし、そういう曲が多くていいし、時に斬新な演出も強いキャラクターも必要なんだろうと思いました。

でもこんどは熱心なファンにとっては、かつてブログに僕が書いたように、オペラであまり斬新な演出をやられるとしらけてしまうのと同じで、オーソドックスでいかにも濃い内容のものの方が良かったりするはずです。逆に個性が強いものは排除されたりもするし、批評家のような目と耳が出来上がってしまっている場合だってある(笑)。結局演出だの何だとケアしてあげなければならない人たちは、真の音楽好きではないわけでしょうが、だからと言ってそれを無視してしまっては、業界がまた冷え切ってしまう。閉鎖的なものになってしまうのです。

誰が食べても美味しいと思えるものもあるはず!誰が見ても素敵だと思うものもあるはずです。その視点の路線を目指すと芸術家としては低く見られがちです。ですが、それが「妥協」ではなく「合意」であればやはり素晴らしいし演奏家としての人生そのものが、さらに楽しく輝くのではないでしょうか。シンプルなようで一番難しいかもです。

ああしかし 妥協の多き この世かな いたしかたなし やるせなきかな(笑)
by masa-hilton | 2005-10-31 23:58 | 音楽・雑記
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