私は実は若い頃から色々な演奏家の録音を聴くのが大好きでした。それも半端な量じゃない、昔はレコードでしたが2500枚ぐらいはあったかな?ずいぶんCDに買い換えてしまって、今はCDを山のように・・・・聴きたいのですが、忙しくてそんな暇がない。今年GWは結構時間があったので、買いためてあったCDを次から次へと聴いています。いやあ~いいですね。昔に帰った気分、それ以上に実に気分が良いしリフレッシュするし、頭は冴えるしやる気も出るし・・・。女の子と食事に行ったり、夜中にアニメを見てる場合じゃないなあ(笑)。聴きまくるのは私という音楽家の原点?かも知れませんね。
それにしても人の意見はあてにならない。例えばレコード芸術やネットの販売サイトで、もろもろ書いてある批評やコメントが的外れ過ぎ!というかこちらの趣味や期待度もあるのでしょうけど、やはりそれを信じて買うと大抵後悔しますね。まずはリヒテルのザルツブルグ音楽祭でのライヴ。これは騙されたな~。この舟歌を聴いたらもう最高、ドビュッシーも夢心地・・・そんな事なかったな~。くすんだ雰囲気。ただ時間が止まったような「月の光」の演奏、これをリヒテルが弾いていると思って聴くと、独特な感動があります。こういう内向的な演奏を「良い」というオタク族が結構いますね。でも自分が弾く立場だと興味がわきません。ショパンのワルツの的確な解釈や、スタジオ録音よりはいい感じのスケルツォは収穫。リヒテルのスケルツォ(スタジオ録音)は日本レコードアカデミー賞かなんか貰いましたが、リヒテルにしては退屈な演奏で「そりゃないよ」と思ってたので。さてさて次には「嵐のような名演」と評された同じくリヒテルのリストのソナタを聴きました。確かに素晴らしく良い演奏なんですけど、もっと炎のようなリヒテルのリストのソナタの録音を知っていたのと、なまじっか音質がいいので壮絶感が薄かった。でも凄~い演奏ではあるんですよ。私はカップリングの、音は濁りまくりで汚いといえば汚いんだけどそこがいいリストの葬送曲でもう満足。ちなみに、リストのソナタの方は1965年の5月18日カーネギーホールのライヴなんです!!つまり同じ5月9日にホロヴィッツの歴史的カムバックのコンサートがあったんですよ。凄くないですか?熱狂の5月!熱狂のカーネギーホールですね。そういう意味でも持っている価値がありますね。 で、そのホロヴィッツの1965年5月9日カムバックのライヴ。実は未編集のバージョンが発売されました。それをじっくり聴く。今までこの歴史的な演奏会のCDは編集されていたのか~というのも驚きですが、どうして編集されたかというとシューマンの幻想曲で大きなミスがあったから?等々・・・の理由が。でも聴いていて全然問題はないです。それ以外にもバラードも緊張してヨレヨレになっていたりそれはそれ、やはり名人の味わいは段違いに素晴らしい。感激!ただ音色が、より自然な感じになっていたのが気になりました。というのは編集したレギュラー盤は、音がもっとシャープな感じがしていて、それがこのホロヴィッツの魅力というか、非凡さを押し上げていたように思います。例えばスクリャービンの詩曲。編集したものは至芸のきわみのような絶妙な風情を湛えていて、独特な緊張感の中を奇跡のような情感が揺らぐといった感じでしたが、未編集盤の方だとちょっと流れてしまっていて、特別な感じがしなかったのです。音色的な問題?興味は尽きません。わずかなことで演奏のイメージは変わるし、難しいものです。でも巨匠達の演奏はやはり凄い。あとアルゲリッチのショパンも安心して聴けました。DGに録音したポロネーズや前奏曲、舟歌等は、彼女のイメージ以上にスタンダードな解釈で、現代的な要素も生きています。 現代的だということで期待をしての大失敗はピエール=ロラン・エマールのドビュッシー。まるで恐るべき天才の登場のようなこのCD評価は高すぎですね。ミケランジェリを超えられないのは仕方がないとしても総じて平凡。まずアルペッジョの練習曲の右手の非音楽的な不器用な動きを聴いただけで、ピアニストの質そのものに疑問を感じるし、音も冴えない。来日した折の演奏で、もの凄いピアニストだと思ったのですが、こうして録音は、思わぬピアニストの一面を浮き彫りにします。怖いよね!多分現在のエマール自身が聴いても気に入らないと思うな(笑)、彼はホント素晴らしいのだから。来日といえば、その変貌ぶりにビックリだったポゴレリチ。彼は本当に上質なピアニストだった。音質が違う。プライヴェートCDR盤で普及されているラヴェルのスカルボは史上最速でありながら、最近の若いサイボーグピアニストのような人工的な臭みは全くなく、すべてがきらめき情感が爆発している。これが恐るべき天才の演奏といえるものでしょう。さてこのエマールならばまだ元祖イケメン・ピアニストのティボーデの方が良いです。彼はご覧のような洒落もののイイ男なんだけど、演奏もまさにそんな感じ。趣味もよくキレもあり、でもどこか鼻先でフフンみたいなところがあって深まっていかないのだけど、そこが彼の魅力。フランス人ならではの粋もあるし。平凡なようで実は平凡ではありません。そしてジャケット写真がカッコイイじゃありませんか?↑の逮捕されてしまったみたいなリヒテルは、一体どうしたんでしょう(笑)。 私のお気に入りは彼のショパンのエチュードなんです。ショパンのエチュードは最近は皆凄く弾けるので、まさにこれが理想です!と言わんばかりの演奏が多いが、私はそこに個性を強引に盛っていくようなタイプが好き。彼の演奏は良い意味での個性が楽しめる。昔、チモフェーエワもそんな演奏をしていましたが、最近彼女見かけませんね、元気でいるといいんだけど。そういう意味では去年アカデミー賞に輝いたツィメルマンのラフマニノフの協奏曲も、嫌なタイプかも(笑)。あそこまで細部に至る完璧さで歌いこまれていると、例えばルービンシュタインがどんな魅力的に弾いても、ちょっとしたことが指のもたつきに聴こえてくるようになってしまいます。ツィメルマンばかり聴いていたら、そうした表面的な理由で、ラフマニノフの濃密な音楽を見失ってしまう人が増えそう。それに例えばスルタノフとでは、実は音量的にかなりの差があるわけで、そのあたりも考えて聴けばミスの有無のメカニズムも解明はされます。何たってリヒテルのリストじゃないけど、私はもっと濃厚でグシャグシャしているのが好きです(笑)。その点ティボーデもクールな貴族風ですが、こだわりがあちこちに散見。ショパン時代の楽器での演奏もカップリングしていて、これも楽しめました。またこの他にはリパッティやマルクジンスキー、コルトー、ミケランジェリ、ギーゼキングの録音等を聴きました。それらはまたこの次、暇な時にレポートいたしましょう。
by masa-hilton
| 2006-05-03 04:13
| 休日は怒涛の鑑賞
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