恩師に叱られる

その昔、今は亡き巨匠の園田高弘先生とご一緒にお食事をしていた時、レストランの支配人が「今ここに武蔵野音楽大学の●●先生と●●先生がちょうどいらしていまして、先生に是非ご挨拶をしたいそうですが。」と伝言をもって来ると、にわかに先生は機嫌が悪くなって曰く「そんなものには会わん!」とバッサリ。困ったような顔をして支配人が引き下がると先生はすぐ「斎藤君、本当にくだらんな!!」と大変真剣に言われたのだった。「いいかね、今日のこの日、この時間の食事というのはね、一生に1度しかないんだ!わかるかい?くだらんことに邪魔されてはいけないんだ!!」・・・・大体こんなニュアンスだったと思うが(笑)、さすがに大演奏家はすばらしい!まさにこの考え方は演奏にもつながると、すっかり敬服して「ご飯の神様と演奏の神様は同じかも?」等と思ってきちんと見習っている。

だからボクは食事は何よりも優先する。とても大事だと考えるようになった。それにもかかわらず昨日は色々と仕事がたまっていたり~の、まさに下らん雑用の処理もあって、朝ご飯を食べはぐったばかりか、そのあとはすぐリハーサルだったので、午後4時半まで何も食べずに終わった。間違いなく先生から大目玉を食らいそうな気がして、大慌てで走り出す。せめて豪勢に行きますか・・・何かおいしいものをはしごしたりとか・・・と思い日本橋へ。

a0041150_11384020.jpg結局、買い物の都合で日本橋高島屋の特別食堂にて「5代目野田岩」の鰻を食べる。野田岩といえばグルメ番組では「うなぎと言えば」で紹介される名店。そして池波正太郎が書いているのは、本店ではなくこの高島屋のほうであるのが面白い。しかし一言で言えば、ボクにとってすべてに物足らない味。柔らかいが、ここまで柔らかいと鰻の食する喜びがないほど。上品というのではなく「柔らかすぎ」のレベルに感じる。つまり天然物で油を全部落として焼くという粋な鰻なのでギトギト感が皆無。高いものをたのんだが、それほど大きいものでもなかった。写真も大きく見えるが、お吸い物のと比べれば・・・ね。

そもそも高島屋の特別食堂は、見渡すとお年寄りばかりなので、基準がお年寄り向けなのかもしれない。でもそれも失礼な話で、ボクの父は年寄り扱いされるのが何よりも嫌いだったから、きっとここに連れて来たらさぞ機嫌が悪くなるだろう等と考えていた。そんなわけで満足できないのは、こちらのギトギト大好きな嗜好のせいもあるので、これはそこそこ途中でやめて、今度は物産展のほうに行き山形のそばの店へはしご。これが(笑)・・・・生臭いつゆと生ぬるい蕎麦、茹で上がりも全く感心できないブヨっとした蕎麦で、いただけなかった。参りましたよ、大はずれ。あ~5000円が無駄に飛んだ気分のご飯。しかし野田岩のお新香は絶品だよ!あまり関係ないか?(笑)

でも蕎麦も嗜好が強い食べ物!これほど好みが別れるものはないので、そう思うのも私だけの問題かも。友人に連れて行かれて「うまいだろう?」と言われても、納得できないことが多い。私が好きなのは中野のさらしなだが、これだって人によるだろう。自分で試すしかない。先日も軽井沢で食べた蕎麦にがっかり。ホールの前だったので色々な演奏家の色紙が飾ってあって、こちらにも色紙を渡されたが隙を見て逃げて帰ってきた。「とてもおいしかった」等とマヌケな署名をここにのこせないぞ!と思ったのよ。でも考えてみると超くだらない。ちょっとつゆが薄いとか、蕎麦がジメッとしてたとか、そんなことだもんね。どうでもいいんだよ、本当は。「まあまあまあまあ・・・・」と人生はもう少し妥協して生きた方が絶対楽チンなはずだから。

というわけで高島屋は服関係のものはよく買うが、食のほうは三越かもしれないと思った昨日。ここまで来たんだから鰻は高嶋家に行くべきだったな。間違いなくこの近辺では1番うまいし、多少高くてもおいしいほうが良いのだ。まさに園田先生の怒声が聴こえてきた1日であった。そういえばチョコレートのジョセフ・シュミットが姿を消していた。三越のガルバニャーティに続き、誠にけしからん話だ。あの辺のデパートは我々よりも世代が上の方々がお客様だから、きっとお客が冒険しないのだね。受けた教育から考えても価値観も狭いだろうし、あまり個性のない無難なものばかりになっていく。ボクの親もそんな感じだった。それは仕方のないことなのだろうけど、試してみるのを怖がっていたら人生はモノクロームになるだけだろうに。
by masa-hilton | 2006-05-26 03:18 | 趣味&グルメ
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