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アイリッシュ・タイナン ソプラノ・リサイタル曲目決定

こちらのコンサートも曲目が決まったようです。完売も間近だと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
あれ?ピアノソロがあるじゃないの・・・・また困ったな(汗)、どんな曲が合うのかな~(笑)。
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●Mein herr Marquis  from Die Fledermaus
●Quel guardo il Cavaliere - Don Pasquale
●Piano Solo
●Deh Vieni non tardar – Le Nozze di Figaro
●Je Veux vivre – Romeo and Juliette

●Copland “Old American Songs”
The boatmen’s Dance
Long time Ago
I bought me a cat
All the Little Horses
At the River
Ching –a –ring Chaw

●Leonard Bernstein
I hate music

●Music Theater
The Tale of the Oyster ( 5 million Frenchmen) Cole Porter
I could have danced all night (My Fair Lady) Loewe
Edelweiss (Sound of Music)
There’s a place for us (West side story) Bernstein
Tonight (West side Story) Bernstein

by masa-hilton | 2006-12-29 01:42 | コンサート・イヴェント告知

普通に行動で、すき焼きランチ

a0041150_1827167.jpgこの時期、人形町の通りには正月グッズの露店が建ちならぶ。クリスマスも過ぎると、片付けの遅れたツリーは色あせて見える。不思議なものだ。年末だというだけで、こんなに忙しいのに買い物に出かけたりする自分も不思議だ。でもそれが人間社会で普通に行動しているということ。それなりに楽しむことが大事だ。ということで三越に年末必需品の買物。

三越に来ると、トンカツの「かつ吉」「宇田川」に行くことが多いが、今日はもっとあたり前の有名店「ざくろ」に行く。「ざくろ」は高級な感じもあるが、あちこちあるので味にハズレもないということで、無難な選択だ。あたり前すぎてレポートしなかったが、実はボクは「ざくろ」の「すき焼き」がお気に入り。1人だからランチの定食がいい。これでも近所の今半よりおいしいと思っている。濃い目の味とご飯がまた良くあって幸せな気分になれる。牛丼にしたいくらい(笑)。素材もさすが良いものを使っているし、卵も2つ来るしこれで2920円は上出来。これを考えると「北浜」の2000円というのも微妙な値段になる。さすがに天麩羅は食べたことがないが、魚の西京焼きがメインの和定食もなかなかうまい。健康食な感じもあるしね。若いときはよく夜にしゃぶしゃぶに行ったが、会社の役員みたいな人に混じって背伸びして食べていたような気もする。ランチにはステーキ(照り焼)もあって、ちょっと高めで5000円弱。これもお得かも。でも高くてもステーキなら「かに瀬里奈」の方がいいな~。かにのしゃぶしゃぶ!を食べて石焼ステーキを戴くという贅沢メニュー!しかしこの石焼ステーキはホント最高なんだよ。食べてみるべし!
by masa-hilton | 2006-12-28 00:08 | 趣味&グルメ

大盛会な納会、幸せなひと時

a0041150_047598.jpga0041150_0472189.jpg忙しかったこの後半、ようやっと昨日で納会です。今年は恒例のクリスマスコンサートが、なんと25日ということで、さらに集客も膨らみます。本当に凄い。この椅子の並び!これがいっぱいになるわけですからね(笑)。
「斎藤さんの人気ですよね~」
と、主催者の方は言ってくださいますが、そんなはずはありません(笑)。多くの方々が音楽が大好きで、柔らかなクリスマスの時間を共有したいと思ってくださったんですね。ありがたく感謝いたします。中には
「毎年来てますよ、来年も来れるかしら。生きていますかね(笑)?」
とおっしゃってくださる高齢の方が何人か。こんなセリフを言っていただけるなんて、演奏家冥利に尽きます。微力・非力ですがこれからも少しずつがんばって進んで行きたいと思います。

ただピアノはカワイの古い中型のピアノで、年々悪くなってきていますが、昨日は調整しきれないほど痛んでいました。カワイのピアノはもともとアクション部に問題があり、3・4日つめて練習するとメカニックなトラブルが起きることもあり、コンクール等で本気で出てくる特別な試作品以外のものは、タッチの反応も遅いために、PPもFFもダイナミックなレンジの色彩に欠けます。もちろん良いところもありますし好き好きですが、微妙な演奏を好むピアニストにとっては選び辛いもので、さらなる老朽化には泣かされます。悪いピアノを弾いたということだけで、練習してきたものが崩れてしまうことすらあります。だからこそ、いつも差し替えの可能なレパートリーを、いくつも持っていることが大事になるのですが。

a0041150_0503580.jpga0041150_050506.jpgでもそんなことは日常茶飯事のこと。できることならば、良い環境を整えて欲しいとは思いますけれど、そんな悪い環境でも大成功することもあるし、良い環境だからといってうまく行くとも限らないのがコンサート(笑)。すべてお客様には無関係なことですし、こちらはどんな場合でもベストを尽くすのみ。強い気持ちを持って乗り切るしかありません。昨日も皆様に「また来年も会いましょう」と握手攻めで幸せなひと時でした。

さて「このホテルの中華はおいしいですよ」といつも舞台の上から適当なことを言っている私ですが、昨日はちゃんとコースを食べて確かめてきました。前菜が特においしい。広東系が好きなので、ちょっとさっぱり風な味つけは好みと違うものもありましたが、スープは絶品でしたね。素材も鳥の甘酢も比内鶏の使用とのことです。
by masa-hilton | 2006-12-27 01:28 | 日々の出来事

メリークリスマス!

a0041150_22441038.jpg上大岡のコンサートは毎年恒例、楽しくノリノリで仲間とやる忘年会のようなコンサート。今年は戦友の萩原貴子さんと、バッチリのコンサートになりました。バッチリと自分で書くのもなんですが、もう10年以上も共演していると、目の動きひとつで何をやるかわかると言うか、息もピッタリというより空気の粒子の流れにも合わせられる、そんなアンサンブルでゴキゲンなんです。

あたたかいお客様には本当に感謝です。ありがとうございました。

そして今日は「休日のクリスマス」。こうしてお天気も良いと何か眠ってしまいそう。そんな時に愛媛からは、先日の松山のコンサートがテレビのニュースでとりあげられたビデオが、みかんと共にやってきました。この写真がそのみかんです!モナカですか?(笑)みたいな感じでしょ。

「巨匠の極み」のみかん!セレブなみかんなんですね。でもその大げさな袋を脱がせると、冴えない色の普通のみかんが登場です。裸になったら大したことなかったみたいな?(笑)そんな感じでしょうか?でも、もうひと皮むいてその身を口に含んだとたん「おお、うまい!」。甘~い時間がはじまりです。おじさんも頭スッキリ、眼も冴えてきました。

皆さんもどうぞ、甘く素敵なクリスマスの夜を!
by masa-hilton | 2006-12-24 23:08 | 日々の出来事

NHKニューイヤーコンサート2007 曲目決定

かねてから告知させていただいています、NHKのニューイヤーコンサート。いよいよ曲目も決定いたしました。どうぞお楽しみに。

● プログラム ●

トリッチ・トラッチ・ポルカ op.214 (シュトラウス)
カルメン幻想曲 op.25(サラサーテ) バイオリン:アナスタシア・チェボタリョーワ
クラリネット協奏曲 イ長調 K622から第1楽章(モーツァルト)クラリネット:赤坂達三
幻想的小品集 組曲第3番 op.54から「ウエストミンスターの鐘」(ヴィエルヌ) オルガン:フレデリック・シャンピオン
ピアノ協奏曲 イ短調 op.16 から第1楽章(グリーグ) ピアノ:斎藤雅広

劇音楽「ペール・ギュント」から「婚礼の場で」(第1幕への前奏曲)(グリーグ)
組曲「ホルベアの時代から」op40 から前奏曲(グリーグ)
「ペール・ギュント」組曲第1番 op46から「朝」「オーセの死」「アニトラの踊り「山の王の宮殿で」(グリーグ)
「ペール・ギュント」組曲第2番op55から「ソルヴェイグの歌」(グリーグ) ソプラノ:大須賀園枝                  
交響曲第1番 ホ短調 op.39から 第3楽章(シベリウス)
交響詩「四つの伝説op.22から「トゥオネラの白鳥」(シベリウス)
交響詩「フィンランディア」op.26(シベリウス)

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by masa-hilton | 2006-12-23 01:58 | コンサート・イヴェント告知

そして本日は休業に 改訂版(続きあり)

演奏で旅であちこちに行けていいですね・・・・みたいなことをよく言われるが、旅行とは感覚が違う(笑)。真剣勝負な仕事だから、地方のおいしいものの食べ歩きみたいな(笑)ことはない。地方は夜が閉店が早いから、寿司・焼肉・ファミレス?それも面倒だからルームサービスのあるホテルをお願いする。またはコンビニ!そんな感じ(笑)。主催者の方がレセプションをしてくださることもあって、それは出会いがあってとても嬉しいが、演奏のことや次の日の仕事を考えるとマイペースな方がありがたい場合もある。旅なら旅情を感じさせる旅館もいいが、演奏会だと極力シティホテルのシングルユースで、ファーストクラスの移動(寝るため)が優先されるので味気ない。東京にいるほうがよっぽどゆったりだよ。

a0041150_3574934.jpgさて昨日は四日市でのスーパートリオコンサート、赤坂さんと足立さんはもう前の日から四日市入りをして待機、私はいつものように当日入り。体力温存を優先する考え方と日帰りできれば越したことがないという時間優先型で行動パターンが分かれるワケだ(笑)。朝からバタバタとしながら出かけた。

四日市の駅でやばいアクシデント。「ナマヅメをはがす」という言い方であってる?とにかく荷物を持って移動するときに、ぐぐっと爪をはがしてしまって、さらに驚くことにボタボタと出血した。絆創膏で応急処置。痛いけれど仕方がない。しかしこういう痛いときはこの「るるる学園」シリーズの絆創膏が欠かせない。なつかしいでしょう!1990年ぐらいのサンリオのキャラクターだよね。これは当時の学生からもらったもんだが、まだ持っているということは(笑)、外ではあまり怪我しないってことかな。「大怪我だ~」「いた~い」等と絆創膏の方が大騒ぎしてくれているので、気分は紛れる。そうは言ってもなんだかんだ、普段は指を怪我することも結構多い。痛い思いをして弾くのはなかなか大変だが、絆創膏しながら弾く方ことの方がもっと大変かもしれないね。感覚も変わるし、指が太くなっちゃうわけだから、技術が必要になるんだよね。さ、今日はどうするかな?と考えながら会場に向かう。そういえば名ピアニスト・ブレンデルって全部の指に絆創膏している・・・・アレは一体何なのだろう。

a0041150_3584356.jpga0041150_474392.jpg四日市は久しぶりだけど、こういう街だっけ?と思ってしまった。道の中央にくすの木が植えられて何とも美しい。タクシー移動中に心も和む。

今日は主催者が大サービス。普通楽屋には、サンドイッチぐらいがポンと置かれているだけだが、今日は乾き物の山だった(笑)。フルーツまで!そしてケータリングの名前が「グリル四日市」・・・なぜか笑える。運んできた容器がそのまま置かれていたのも、なかなか面白い。

コンサートは、会場ぎっしりいっぱいのお客様。とても温かく、我々も絶好調。楽しくゴキゲンな時間だった。駅での指の事件のことをトークで話すと、休憩中CDを売っていた私に、たくさんの方が心配そうに話しかけてくださった。ありがたかった。嬉しいね。でも全然そんな感じじゃないって?あの、ちょっとは痛かったんですけど(笑)。本当に運良く大丈夫だったんだよね!結局本番も、絆創膏しながら弾くことにしたんだけどそれも正解。ギンギンノリノリだったでしょ?やらなきゃないものは、やるしかないもの。それにしてもうまくいってよかった!

a0041150_491472.jpg帰りの新幹線ではもう時間的にお弁当にいいものがなかったので、家に帰ってからゆっくり「とり鈴」に行くことにした。実は昨日も「とり鈴」で食べていたし。音楽家は夜型、というか好き嫌いに関らず夜型でなければ出来ない業種!毎日4時や5時に寝るとなると、2時まで開いていておいしい限られたお店となれば、重宝なことこの上ない。そしたら赤坂さんも一緒に行くということになり、2人で夜中2時まで大盛り上がりだった。今日はいつもの「はつ」「レバー」等も絶品だったが「かわ」とかも特においしかったな。オープンのときよりもタレの味が芳醇になってきた。満足満足。そして「白子ポン酢」。これは温かい食感がうまい。とてもすばらしい。赤坂さんは通好みの焼酎を4杯ほど。超ゴキゲンで帰られた。2時半ぐらいの話。

家に帰ってからは色々次の準備もあるからまたバタバタと。多分指も痛いから事務的なことから中心にやろう・・・とか考えながら、お土産にもらった「赤福」を戴く。4時ぐらいの話。甘いけどうまいんだな。伊勢の名物のあんころもちである。それにしても今年もあと10日足らず。あと本番は2回。その準備もあるし、グリーグの譜読みを完成させて暗譜もしないとだから、ぐずぐずしてはいられないんだ。ちょっとこの忙しい時期の怪我はやっぱりイタイよな、練習できんしね。そしたら今日は頭痛に見舞われて(笑)完全休業の1日に。あ~あ。そして今はこれから寿司でも食べに行こうかという感じだよ。皆さんも怪我には充分気をつけてね~。そして休養も大事(笑)。

a0041150_19113215.jpga0041150_19152623.jpg・・・・とブログを書き終えて、本当に太田鮨に出かけていくと「先生!ナイスタイミング!今日は生娘があります!」と何ともラッキーな一言!初めて読む方のために説明すると「生娘」は「浅ジメのコハダを使ったコハダ丼」のこと。ここにも詳細が。常連だから無理して作ってくれる特別料理。ただ何日にシメの作業をするかわからないし、5時までにシメ終わって、食べごろは6時半ぐらいまでだという感じだから、タイミングが超難しい幻のメニュー(笑)。もちろんお寿司のコハダはこの後がじっくり食べごろだけれど、コハダ丼はそうはいかない。8時だと味が変わってしまう。今回は6時半に普通にマグロでも食べようかとたまたま行ったら、1席だけ空いてて「生娘」もあり!本当に幸せ!相変わらずの強運!あとは「クロダイ」が絶品においしかった。

特別メニューといえば、天麩羅の「中山」でリクエストして作っていただいていた「海老天丼」は、正式メニューに採用していただいて、最近はお昼でも人気らしいんだ。よかった~!でもあたり前!おいしいんだもん。海老を5本または6本、そして私はピーマンを1個つけてもらっているんだが、これで1200円なんて超安い。どこの天丼を食べても、結局はこれに帰ってきてしまう日本一の天丼なんだよね。濃いタレ、黒い天丼・・・あっさり系が好きな方は、もしかすると厳しいかもだけど、これがお江戸の味。いやうまい!書いてるうちにまた「アワビ」の天麩羅が食べたくなってきちゃったよ。これがまた最高だからね。
by masa-hilton | 2006-12-20 17:40 | 日々の出来事

休日は怒涛の鑑賞 その8

a0041150_4495068.jpg今年はモーツァルトイヤーということで大喧騒であったが、その影で大ピアニストのワルター・ギーゼキングの没後50年であったことはあまり言われていない。ギーゼキングの伝記的なことはよくわからないが、一般には交通事故で亡くなったとされている。しかし夫人を亡くしたその大きな交通事故は1955年のことで、再起不能といわれつつその後もコンサートを続けている。その死の年の1956年の6月グラナダの宮殿での演奏会ライヴがこのCD。そういう意味では貴重な録音である。ギーゼキングは普及盤の録音の数も非常に多く、モーツァルト、ドビュッシー、ラヴェル等の全集は高く評価されている。しかし多忙をきわめたピアニストでもあったので、ライヴの方はかなり粗いものが多く、そうしたものを聴けば、移動の列車の中で譜読みをして会場に着くなり暗譜で弾いたという伝説も、やはり人間技には限度があったのだと逆にホッとする。交通事故以来ライヴは益々安定感を失ったとされているが、普及盤での完成度の高いドビュッシーの演奏とは全く違い、このCDもいい加減な部分が多い。緊張感も薄くラフな演奏となっている。ただホロヴィッツが尊敬するピアニストの中にこのギーゼキングがいて、その音色のマジックについて絶賛していたが、このCDではそのニュアンスのうまさ、音色の変化とダイナミクスの使い方が、まるで種明かしのようによくわかる。ホロヴィッツが良く使う音色のマジックの原点がここに示されているような感じがあって、大変興味深く聴いた。それは今までギーゼキングの他のCDからは全く感じなかったことで、音像もリアルなのが良い。曲はドビュッシーばかり、前奏曲のセレクト、映像や版画からとベルガマスク組曲とバラードやダンス等の小品が入っている。

a0041150_5262259.jpg近年マイラ・ヘスの秘蔵録音も次々と登場してきている。今回はイリノイ大学でのライヴと、放送でのライヴ録音。グリーグの協奏曲やショパン等も入っていて興味深い。実はこのイリノイ大学のコレクションには、数々の幻の演奏が残っているという話なので今後も期待したい。マイラ・ヘスと言えばドイツ系のレパートリーを誇るイギリスの大ピアニスト。日本での批評コメントを見ると「詩的なピアニスト」と書いてあるものが多く、驚いた。確かに巨匠であれば、例えばバックハウスだって若い人に比べれば随分詩的であろう(笑)。だからといって「詩的なピアニスト」と呼んでしまうのは違う気もする。おそらくは大批評家の誰かがそう評して、それが定番となってしまったのだろうが、本来は情熱的もしくは感情的な演奏をするピアニストで、内容の奥深さも失われていないし腕も立つ。過小評価されている巨匠の1人だと思う。ルドルフ・ゼルキンぐらいの評価はあってもいいしそれ以上かもしれない。このCDはバッハのパルティータの4番が入っているのだが、ピアノという楽器をいかした表現の大きなバッハで、原典主義な方にはおすすめ出来ないが私は感動した。脈打つ感情表現とスケールの大きさと深々とした味わいが素晴らしい。ぜひこんな感じで弾いてみたいものだ。ベートーヴェンはお得意なものなので「テンペスト」も熱い気持ちの入った演奏。グリーグも情熱的だったがショパンはやや不得意そうではある。それもご愛嬌といった「遊び」が感じられ楽しい。

a0041150_038930.jpg原典と言えば私は「モーツァルトは、彼の生前に存在しなかった現在のピアノという楽器で弾いている時点で、もう原典主義は存在しない」と思っている。そしてモーツァルトがこのようにポピュラーになっているのは、何よりも弾き継いできた名演奏家たちの勲章であると思っている。未亡人や遺族がその名前を残すべくことをきちんと行ったことも併せて見逃せないし、かつてバッハもそうであったが、モーツァルトでは特にピアノ協奏曲は忘れ去られるレパートリーになりつつあるのを、演奏家たちの努力で現在のような盛況ぶりにしたという歴史がある。名曲が残るのはその曲において名演奏が数多くあったという履歴の証である。モーツァルトの死後どういう風に弾き継がれてきたかを考えると、まずはかなりロマンティックに弾かれたはずだし、モーツァルト自身がもし生きながらえれば、間違いなくそういうスタイルで弾いたことも想像できる。だからその伝統的な演奏スタイルにこそ注目し、まず尊重すべきだと考えなければならない。ランドフスカの弾くモーツァルトもまた、そんな理想的なモーツァルト演奏の1つである。ハープシコードの大家だったランドフスカが、現代のピアノに置き換えたときに「戴冠式」をこのようにロマンティックな演奏にしたのは、しっかりとした理由と検証があると考えるべきだ思う。現役の録音ではその他、エドヴィン・フィッシャーやヴィルヘルム・ケンプにも同質の流れを感じることが出来る。名手カーゾンはシュナーベルの弟子、バレンボイムはフィッシャーの弟子と、実は継承もされてきているのだが。感情的な演奏は、没個性の同質的なイメージと壁を見事に打破してくれる。私はこういうほうが好きである。

a0041150_1545393.jpgスイスの女流ピアニストジャクリーヌ・ブランカールのモーツァルトのソナタが3曲はいっているこのCD。ブランカールは非常にモーツァルトらしい教科書的な演奏をしているようで、実は結構アーティキュレーション等がラフである。またいらぬところに、特にフレージングの最後にアクセントをつける癖があって、本来なら非常に鼻につくところだが、これが実に自然なのだ。どのフレーズも良く歌われていて、時折微妙なニュアンスの変化を目立たない形で行っている。テンポ設定はやや速めに置いて、情感的でいながらも表面はパリパリとした感じを残して、上品さをアップさせている。この人は大変な名人である。強いて言えば音量的なものは不足している。メインのラヴェルの協奏曲で明らかだ。共演のエルネスト・アンセルメ指揮のスイス・ロマンド管弦楽団はフランス音楽の絶対的な権威者でもあるため、ジャケットもブランカールの写真はない。これは失礼すぎるだろう。左手の協奏曲はラヴェルというよりはドビュッシーの色合い。ふさぎ込んでいて音色も華やかさがなく、ジャズ的なイディオムも正面からとらえて、クラシックに地味に幻想的に弾き進む。しかし第2主題が現れた途端、もしこれを実演で聴いたら涙しないではいられないかもしれないと思った。録音は古いのでそこからの音はやや貧弱だが、おそらくは実に巧みなニュアンスと情感で弾いていることが充分伝わってくる。もし名づけるなら「喪服の貴婦人」のピアノだ。当然両手の協奏曲の第2楽章もまた、くすんだ響きの中にうつむき加減ながら、心を打つ歌が伝わってくる。また3楽章の冒頭からのピアノの動きも、柔らかでエレガントな歌として弾いているところが素晴らしい。

a0041150_112648.jpg学生時代から愛聴していたソロモンの弾くベートーヴェンの後期のピアノソナタをCDに買いなおした。特に31番と32番の演奏は、全ての面でこの演奏が最も優れていると長年思ってきたものだが、あらためて聴きなおしても実に素晴らしい。オーソドックスな解釈と一言では言えない奥深さ、楽譜の正しい読み方や正しい弾き方が決して情熱や情感を失わずに見事に再現されている。ソロモンはもともとはカットナー・ソロモンという名前だが、本人がカットナーと言う名前を嫌いただのソロモンを通した。また来日したこともあるのだが不調で失敗等もあったため、日本での評価は長らく低くとどまった。ちょっと馬鹿馬鹿しい話だ。が、ソロモンはまぎれもなく第1級の芸術家である。また50代半ばで手が動かなくなる病を得て演奏活動を中止した、惜しまれる逸材だ。70歳を過ぎて手が健在であればどれほどの深い演奏をしたかも計り知れない。このEMIの録音は入手しやすいが、このシリーズは以前のリリー・クラウスもそうだったが音が良くない感じもする。ベートーヴェンならば必聴のピアニストだ。

a0041150_3473875.jpgさてこちらはメジャーな巨匠クラウディオ・アラウ。ベートーヴェン弾きのように思われているが、私はリストとブラームスに心酔している。叙情的で歌い抜かれ、その上スケールがどこまでも大きく技巧的にも空回りしない素晴らしい演奏だ。音量があまりないのにもかかわらず音楽の宇宙の広がりで、スケール感を作っている辺り、勉強しなければいけないワザである。同時にショパンもうまく、例を言えば協奏曲の叙情的な旋律の歌いまわし等秀逸だ。時々誰もやらないようなぐっと来る歌い回しをやるかと思えば、重くノソノソと不器用なイメージで弾いてみたりと、巨匠の演奏と言うのはサラサラやらないのが共通項だ。さてこのアラウの「プラハの春」でのライヴは大変充実していて、このピアニストの素晴らしさを再確認できる。ショパンのプレリュードは心技一体の名演で57歳のアラウの魅力溢れる至芸が楽しめた。なかなかこうはいかない素敵で感動的な演奏だ。シューマンの交響的練習曲は73歳、やや重めな足取りで、独特の暗めな歌い回しで内容本意の演奏スタイル。アラウならではのシューマンともいえるが、一連のスタジオ録音のシューマンよりずっと血が通った感じがする。全曲を聴き終わってくる充足感が心地よかった。

a0041150_442151.jpg私はNHK「スーパーレッスン」の中ではミシェル・ベロフのレッスンがとても好きだった。ベロフは若い頃「衝撃のピアニスト」として世界を席巻したが手の故障という不幸に見舞われ、ようやっとカムバックしたといういきさつがある。現在のベロフと、私たちが最初に見た頃のベロフでは、やはり随分と違うイメージがあるのだが、こうして若い頃の演奏をあらためて聴くと、必ずしも「衝撃的」と言うものではなく、実力的にいっぱいいっぱいの所を勇気を持って鋭角的に弾いたという強引さが、ある種魅力に聴こえているような感じだ。ヴォロドスやランランといった現在のピアニストたちとは比べようもない。わが身に考えてみても、こうした時代の流れというのは恐ろしくとても太刀打ちは出来ない。モンスターのような俊英たちが出てきても生き残っていくためには、魅力や味がなければ駄目ということだ。こうしてベロフの若き頃の代表的な「個性的といわれたシューマン」の録音を聴いて、逆に今のベロフの方がますます好きになった。もしかするとまだ手の故障の後遺症も残っているのかもしれないが、ぜひ乗り超えて大巨匠となって欲しい。

a0041150_145614100.jpg若い若いと思っていたが、ジャケットを見て驚く。すっかり年を重ねたおじ様になっていたジャン・フィリップ=コラールのチャイコフスキーを聴く。コラールはオールラウンドプレイヤーで、アシュケナージのようにレパートリーも広い。昔のチッコリーニのように何を弾かせても安心して聴けるタイプで、その分際立った個性やアクがなく、そのためにいつまでも若々しいイメージもつきまとう。しかしこういう人こそ真の実力者ともいえる。チャイコフスキーは充実しきった演奏で何の過不足もなく、さらにスケールも大きくこのピアニストの底力を知るには充分すぎる名演だった。興味があったのは彼の師であるサンカンのピアノ協奏曲が入っていたこと。もともとフランス音楽好きだし、フルートのソナチネは名曲であるし優れたピアニスト&教師でもあったサンカンの作品は、ぜひ聴きたかったのである。が、この曲が普遍的なものになるのは難しいかもしれない。2楽章の洒落た美しさ、3楽章の悪ふざけもいかにもパリ音楽院のソロ・デ・コンクール的なフランス的な色彩だがやや地味な感じもあるので。共演のビルケント交響楽団はトルコの有名なビリケント大学に所属するオーケストラ。これもなかなか良いセンスだ。来日もしたこともあるようである。

a0041150_1515635.jpgアメリカのピアニスト、ジョン・ブラウニングも若い印象があったが2003年に69歳で死去とのこと。クライバーンを上回るアメリカの星として鳴り物入りで注目を集めていた。バーバーの協奏曲は彼のために書かれたもので、その初演者(共演ジョージ・セル)としても有名、ただ日本では全く忘れられた存在になっていた。その後2000年に来日してN響とバーバーを弾いている。彼は活動はちゃんと続けていて、国際コンクールの審査員にも名を連ね、成熟した素晴らしい演奏家になっていたのである。大事な時期を聴きはぐってしまい残念に思える演奏家だ。日本ではCDで有名なものも初期のものばかり。プロコフィエフの協奏曲全集とチャイコフスキー、ショパンの練習曲。これらは一見無難なようでいて情感もあり、現代的なクールさも持ち合わせた優れた演奏だった。最近ライヴ等も順次復刻されてきている。ジョージ・セルとの共演で1969年10月のライヴでのプロコフィエフの第3協奏曲を聴く。まずはライヴながら、この難曲で一糸乱れぬクリーヴランド管弦楽団のアンサンブル能力が素晴らしい。セルの音楽作りに組み込まれた形で、ブラウニングも充分な役割を演じて上々の演奏だ。問題はカップリングのプロコフィエフの第5交響曲。フィナーレに向かってのこの異常に速いテンポは、オーケストラとしては信じられないくらいの神業である。エネルギーに満ちた爆演で度肝を抜かれた。全楽章にわたる、音楽の見通しの良さ!さすがにセルは凄い指揮者だ。プライヴェート盤だから仕方がないが、もう少し音質がよければ万人向きの録音だったろうに。いずれにしても衝撃の演奏といえると思う。

a0041150_12513557.jpgさらに、今更のようにドヴォルザークの「新世界」等を聴いて、感動することもあるまいに!と思いきや大いに感動させられた。ラファエル・クーベリック指揮のバイエルン放送交響楽団のライヴである。クーベリックは私が思うに、非常に過小評価されている指揮者である。もちろん有名だし巨匠であることは認められているが、こんな魂を揺り動かすような演奏をできる指揮者はなかなかいない。古きフルトヴェングラー等は信望者も多く、録音の良し悪しに関らず話題も多いが、内容的にクーベリックこそそれに勝るとも劣らない大指揮者だと思っている。そんなクーベリックではあるが、ここのところライヴが色々復刻されて、マーラーの名演等も随分と表に出てきているので嬉しい限りだ。そんな名演ライヴの中に日本公演も含まれているのがさらに嬉しいし、もっと日本人は大騒ぎして欲しいと思う。さて「新世界」だが、たぶんこの写真のCDと同じ演奏であると思う。私の方は上記のセルと同じプライヴェート盤で、1980年6月19日と明記してあるが、こちらの普及盤は19日と20日のクレジットがあるらしいので、もしかして多少編集したものなのかもしれない。解説等はまったく必要なく、聴けば誰もが名演とすぐわかる。終楽章のフィナーレ、咆哮する金管楽器の高鳴るテーマに、両手を広げたまま宇宙に解き放たれたようなカタルシス的な開放感を味わえる。個人的にはオーケストラの「やる気」も評価すべきだと思っている。3楽章の伴奏部分のきざみ1つ1つにも心が入っているのが伝わってくる。絶対の必聴盤だ。

a0041150_17341480.jpgそして今年はリストが亡くなって120年でもある。リストの曲には精神的なものも多くあるが、エンターテインメントな作品はやはり欠かせない。ジョルジ・シフラの弾くハンガリア狂詩曲全曲の再録音は、やりたい放題の超面白い演奏。こんな演奏だったら毎日でも出かけて聴きに行きたいという感じで、長いこと愛聴盤になっている。でもここでのシフラは技術的には絶好調ではない。かなりのハッタリをかましたごまかしもあったりするのだが、音楽の作りがそれ(ハッタリ)と良い意味での相乗効果を持って大胆なものとなり、徹底的に楽しい。しかしハンガリア狂詩曲の旧録音も普及盤で現役なので、シフラ・ファンの間でも好みは割れる。そちらは完璧な技術もさることながら精神的にも深く、完成度の高い録音だった。気難しい方々には、再録音の煩悩を切り捨てたかのような大騒ぎぶりは苦手かもしれない。でも、そう感じるのは無能の証である。ピアノのことを少しでも知っていれば、シフラのアイデアに満ちた、曲芸的ではあっても良く歌えているフレーズ、音楽的な高揚感は驚愕に値することがわかるはずだ。こんな演奏を誰が出来ようか!これこそ天才の感性!好き好きは仕方がないが、シフラは本当に素晴らしいピアニストである。
by masa-hilton | 2006-12-19 02:55 | 休日は怒涛の鑑賞

城ヶ島の雨

このタイトルをいえば思い出す曲は大抵はあの短調の暗~い曲。でも山田耕筰が全く同じ詩を使って、長調でのやや明るめな、のびのびとした情感豊かな歌曲を作っている。ご存じない方も多いようだが、これはわが盟友:ソプラノの足立さつきさんの18番で、先日の紀尾井ホールでも歌われた。

さてさて客席では、足立さんの熱心なファンの方がお友達を連れて得意満面。

「どう?さつきちゃんの日本歌曲?最高でしょう?」
「良かったよ~ありがとう誘ってくれて。でね、”城ヶ島の雨”が大好きなんだけど」
「うんうん、今日も良かったね!」
「良かったけど、知ってるものと違うような、今まで聴いたことがないような・・・」
「そうでしょう!さつきちゃんの歌はね、斎藤さんがいつも素晴らしく編曲しちゃうんだよ」
「へえ、編曲したんだ。どおりで!別の曲みたいだったよ、そっかそっか」
「そうなんだよ、斎藤さんは素晴らしい人だから、みんな変えちゃうんだよ」
「そっかそっか、とても良かったよ、別ものだった!素敵だった~」

・・・・あの、別ものですから。そこまでは変えませんから(笑)。よろちくねっ!
by masa-hilton | 2006-12-18 01:08 | 日々の出来事

上大岡のクリスマスコンサート

毎年恒例になりました。今年も楽しく参ります。今年はフルートの萩原貴子さんとのジョイントです。

クリスマス・メドレー(全16曲)
ショパン /マズルカ ロ短調・別れのワルツ・アンダンテスビアナートと華麗なる大ポロネーズ
ドップラー/ハンガリア田園幻想曲 、ゴダール/ワルツ 、ドビュッシー/2つのアラベスク
萩原貴子編 /愛燦燦 、ビゼー/ カルメンファンタジー

12月23日の6時からです。詳細はこちら
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by masa-hilton | 2006-12-17 22:40 | コンサート・イヴェント告知

お急ぎください

まもなく完売するはずです。どうぞお急ぎください。春に聴く「冬の旅」ですね。
どうぞお楽しみに。
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by masa-hilton | 2006-12-16 04:54 | コンサート・イヴェント告知