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麻布十番「ラ・リューン」のランチ

ややお疲れである。それを見かねて、打ち合わせを私の最もお気に入りのレストランの1つ「ラ・リューンでやろう」と心遣いをしてくれた。人の心が良くわかるのと同時に、センスの良さを持ちわせている有能な人がそばにいるというのは、この上もなくありがたく感謝!恐縮ながら今回はご馳走して戴いちゃった~。

ラ・リューン」にランチに行くのは初めて。以前は夜だったね。とにかくこだわりの野菜料理が凄く、それが一流ヅラの多くのレストランのようではなく、良い素材だからこそ斬新なアイデアや個性的なソースを作るという芸術的なスタンス。これは本来はあたり前だ。「素材の良さをそのまま生かす」というのは聞こえが良いが、時には無能な演者の体の良い逃げ口上でしかない場合もある。「塩で焼いた焼き加減がすばらしい」など、お金をかけた器具があれば簡単なことかもしれない。音楽もそうだ、学術的な研究や原典にこだわるのは研究者であって、大抵の場合アーティストとは呼べないことも多い。

麻布十番「ラ・リューン」のランチ_a0041150_421325.jpgオーソドックスな解釈はもちろん基本だし大切だが、それがちゃんと人間味とアイデアで活かされて昇華されなければ意味がない。例えば老ヴィルヘルム・ケンプのシューベルトの演奏のようなものでなければね。写真のCDは有名な「即興曲」と「楽興の時」「イ長調ソナタ」が入っているお得盤。ピアノを弾く人間なら必携必聴の名盤でもある。このようにすばらしい演奏には簡単に出会うことはできない。1つのフレーズとっても、実はとても非凡であるのに、すべてが人間的で自然で、まるであたり前のようにことが成されていく。真髄を学ぶというのは、この場所を目指して勉強を積み重ねていくということだろう。だのに、それがそうでもないことが多い。勉強のための勉強、研究のための研究、それはただの発表会のようなものを聴かされたり、読まされたりすることである。一見価値がありそう?確かに価値はあるのだろうけど、例外なくつまらなく虚しいものである。

と、めずらしく鼻息が荒いが(笑)、たとえ安価なランチでもベストを尽くす前向きな姿勢があふれる「ラ・リューン」のお料理に心から感服して、そんなことを思った。すばらしい。もちろん何事も好みがある。それは宿命であるところだ。そこが面白い部分だし、我々すべての人間に成功の可能性をもたらすこともあるし、絶望的な結果を招くこともあり、作り手としては受け入れがたい苦悩もここにある。

さてお料理のほう。季節の飾り付けのあと、先付けに出てきたのは最近流行の「土」の料理だ。もちろん上に乗ったお芋を食べるのだが(笑)、ちゃんと焼かれて調理された土の微細なニュアンスに富んだ味が強い印象を残す。今日は前菜1品の所を強引に2品にして戴いた。まずは冷製「ウニとカボチャのソルベ、ナスの煮浸し、コンソメジュレ寄せ、ライム風味」これはすばらしいアイデアの料理だ。まずはカボチャのソルベがウニと一体感を呼ぶ。この自然の甘さ!冷たいナスはコンソメで下仕事をしたものでここも技あり。コンソメのジュレもまた一筋縄ではない。まとまりが良くても斬新なアイデア満載だ。次は温かい前菜でフォアグラのポワレ。以前もここのフォアグラは絶品だと思ったのだが、今回はぶっちぎりに旨かった。う~ん、メインもやめてこの料理ばかり4皿ぐらい食べていたいね。「フレッシュフォワグラのポワレ、和栗のブルーテ、秋トリュフ添え」ということで季節限定!皆様ぜひ急がれよ!この栗を使った複雑な甘みのソースは絶品でありまする。

麻布十番「ラ・リューン」のランチ_a0041150_512762.jpg麻布十番「ラ・リューン」のランチ_a0041150_5121877.jpg麻布十番「ラ・リューン」のランチ_a0041150_5123298.jpg

麻布十番「ラ・リューン」のランチ_a0041150_5124558.jpg麻布十番「ラ・リューン」のランチ_a0041150_5132085.jpg麻布十番「ラ・リューン」のランチ_a0041150_513339.jpg

麻布十番「ラ・リューン」のランチ_a0041150_5134724.jpgここのポタージュもまた個性的。以前は酸っぱいコーンを使ったものだったが、今回は大根。やや辛味もあり複雑な味わいが素敵だ。ちなみにパンは「リエット」で戴く。これがクセがなく美味しい。この辺りも私のツボにすべてがはまっている。メインは大好きな「ウズラ」。ただこれがクリームソースだったので、わがままを言って変えて戴いた。そして出てきたのは夜のメニューで鳩のローストなどに使う「レバーとごぼうのソース」。濃くて味わいが深い。美味しいね。そして当然のことながら野菜にこだわる姿勢はそのまま。ごぼうのお味もど真ん中だ。大満足!!確かに私がここが大好きなのは、メニューそのままに選ばずアラカルトで選んでいくからかもしれないのだが、自分で選べば必ず良いものにあたる奥深さがあるということだ。

デザートは名物の自家製の「モンブラン」。こちらはやや甘みが少なく、私には思ったほどのものではなかったかも。というのは我々の世代は現在食べられているような高級モンブランは苦手だったりする(笑)。私たちが好きなのは、まっ黄色な体に悪そうな人工的な甘さの昔っぽいモンブラン。コージコーナーあたりに行くと、安い値段で売っているほうのアレだ。昔ながらの湿っぽいメロンパン(干しぶどう入)とか、透明なクリームの入ったクリームパンとか(笑)、最近は見かけなくて残念だよね。

私たちはこうしてわがまま言い放題だからお高くなってしまったのだけど(すみませ~ん 笑)、普段の「ラ・リューン」はこのお料理にしてはリーズナブルと評判だ。隠れ家のような小ささもまたお気に入りの理由。そしてお土地柄もあるのか、モダンな客層もいい。充実している人生を実感できる、そんな店だ。毎日でも伺いたい。
by masa-hilton | 2010-11-20 05:33 | 趣味&グルメ
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