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ショパンのバラード第4番   ロベール・カザドゥシュ

唐突だが、しばしば弾かれるこの曲は非常に難しい。少なくても、こちらが望んでるロマンティックな世界を描いてくれているピアニストは数少ない。でもそんなピアニストのレクチャーを聴いていると、かなり踏み込んだ解釈を持っていて納得させられることも多いので、要するにそれらを音で具現化することが難しいということだろう。

そうはいってもバランスのとれたアシュケナージを筆頭にツィメルマン、リヒテル、ルービンシュタイン、コルトーやフランソワ、そしてホロヴィッツ等々・・・名演はいくらでもある曲だから、余計に始末が悪い(笑)。

フランスの往年のピアニストのショパンのバラード第4番   ロベール・カザドゥシュ_a0041150_2237107.jpgロベール・カザドゥシュ(ROBERT CASADESUS,1899~1972)の演奏は、その中でいつも特別なものを感じさせる。カザドゥシュといえば大変端正なイメージ、ルバートも多用せずスタイリッシュな演奏をする。ラヴェル等のフランス音楽においても大家である。でも繊細かといえばそうでもない。ソロでのベートーヴェンなどは雑な感じな演奏だし、ドビュッシーでも丁寧ではない。ドイツ音楽についてはイーヴ・ナットの影響もあるかもしれず、そのスタイルを評論家的には「ケンプ等と比べて厳しい姿勢」と評していたが、むやみに情熱的な一種の多感さを、心温まる表現とはちがう情感で弾ききったものだ。厳しさではなく、ストレートな情感がクリアーな構築感を導くのだと思われる。ドビュッシーについても雰囲気よりも直接的な表現が前に出ていて、独特である。しかし最近出たDVDで前奏曲の「花火」を聴いたが、ボクは生まれて初めてこの曲で「夜空の花火」をイメージできた。この難曲は色彩的に弾かねばならず、また技巧的にも冴えていないと、なかなか魅力的には聴こえてこない。カザドゥシュは技巧的にも荒いし、何せ丁寧でないのでただ無造作に弾いているだけという印象なのに・・・とても驚いた。バラードの4番でも淡々と何もせず、ロマンティックに弾こうとかドラマを描こうとかしない、むしろ日本人が弾く味気ないショパンに近いもの(笑)。しかしとても平凡なその風情が、不可思議にも納得のいく満足感を与えている。

「どこから見ても普通である」ことは凄い事なのである。押し付けがましくない説得力を持っている、巨匠ならではの技に感嘆した。そしてそのバラード第4番はライヴ録音なので、コーダで崩壊し暗譜を忘れてどこかの空間にワープで一発!共感は倍増した(笑)。得手不得手がある巨匠の方が好みだから。ね!

もともとカザドゥシュはお気に入りのピアニストである。モーツァルトの短調の協奏曲の激しさ、ラヴェルでのモダンで広々とした味わい、ショパンのマズルカでは泣かせる演奏を聴かせたし、ヴァイオリニストのフランチェスカッティとのコンビでは大らかな歌い合わせがすばらしい。フォーレのピアノ四重奏曲第1番がボクの最も好きな曲になったのは、このカザドゥシュとカルヴェ弦楽四重奏団との歴史的録音を聴いたからだ。

翻訳ページなのでかなり重いがカサドゥシュのサイトがあった。トップページで彼の作品が、更新のたびにいろいろと流れるのがうれしい。
by masa-hilton | 2005-07-26 17:35 | 大ピアニストたち
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