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ムソルグスキーの展覧会の絵   レナード・ペナリオ

a0041150_2029321.jpgアメリカのピアニスト、レナード・ペナリオ(LEONARD PENNARIO,1924~2008)についてご存知の方は少ないと思う。日本ではこのピアニストはEMIのセラフィムのシリーズの廉価盤によく登場するが、彼の演奏が特別に話題になること自体皆無だといって良い。その廉価盤はチャイコフスキーやラフマニノフの第2協奏曲(2種あるようだ)、グリーグ等の有名協奏曲がほとんどで、ラインスドルフ等との共演盤である。輸入盤の方では協奏曲ではラフマニノフの3番、ショパンの2番、リストの1番、プロコフィエフの3番、バルトークの3番等も入手しやすい。どの演奏も華やかだが手堅い感じで、過不足はないものだが、録音のせいか音色に鋭さや輝きがあまり感じられないこともあって、特徴のない普通で平凡なものとして片付けられてきた。しかし、どの曲も「違和感なく普通に弾ける」ということに、どれだけの底力が必要とされるかを知るべきである。また音楽に流れているヒューマンな温かみも特筆すべきもの。廉価盤扱いということから、日本人は最初から割り引いて聴いてしまっているような感じも受ける。もともとペナリオはラフマニノフを尊敬しているということで、その演奏の共通性も本来は容易に見出せるはずだ。

アメリカでの評価はかなり高いと聞くし、室内楽でもハイフェッツらとの共演盤がある。晩年になって急に日本でホルへ・ボレ(ボレット)が有名になった例もあったが、取り上げられ方や宣伝によっては、わが国でももっと大スター的なピアニストになれたはずで残念だ。ペナリオはハリウッド系のオーケストラや野外コンサートへの出演も多く、アディンセルのワルソーコンチェルトのような作品もうまいし、当然ガーシュインの演奏も得意。ただラプソディー・イン・ブルーはかなり素晴らしい演奏なのだけれども、編集ミス?でカデンツァの部分だけモノラル録音ではめられている。この他にもガーシュインの第2ラプソディやアイガットリズム変奏曲もあり、これらの作品はペナリオの演奏によって初めて知った。

a0041150_16211532.jpg最近このペナリオの若い頃の本格的な演奏を集めたボックスが発売され、彼の今まで知らなかった部分を聴くことが出来て興味深かった。この中の「展覧会の絵」は、今までのペナリオの印象とは違う大きなスケールを持った多彩な演奏で、内容も充実していて優れた印象。またショパンのソナタの2番等も格調が高かった。中には「前のめりな」物もあったりして、感情の起伏も充分感じられて面白い。英雄ポロネーズは従来のペナリオらしいものだが、ワルツ集はやや強引な表現もみられる。デビュー録音のプロコフィエフの「つかの間の幻影」は純度の高い演奏で、このピアニストの質の高さを改めて認識した。シューマンの幻想曲やリストのソナタ、フランクの前奏曲・コラール・フーガやラヴェルのラ・ヴァルス、バルトークのソナタ、さらにはジャズ風な自作の曲も入っていて、大いに楽しめる。

a0041150_20101753.jpg実は私が彼に興味をもつ理由は、クラシックピアノ曲の最初に買ったLPが彼による名曲集だったゆえだ。ハンガリア狂詩曲の第2番、ラ・カンパネラ、愛の夢、月の光、幻想即興曲、英雄ポロネーズ、別れの曲、アンダルーサ、火祭りの踊り・・・ピアノ曲の通俗名曲を最初に聴いたのがペナリオによるもので、これが今聴いてもかなり良いレコードなのである。特に、ここ最近になって注目が高くなったシュトラウス=エヴラー編の「美しき青きドナウ」まではいっていて、これが大変ステキな素晴らしい演奏。そのすりこみのせいかアムランが弾こうが誰が弾こうが、このペナリオの弾く演奏を超える印象は持てないし、私はこの曲を小学校の2年生ぐらいから知っていた(笑)。このレコードを聴くと、子供の頃の色々な思い出が蘇ってくる。当時は楽しいことよりも辛く厳しいことの方が多かったので、ペナリオの温かな音色は大いなる慰めだったし、いつかこのような曲を弾けるようになるのかな?という憧れでもあった。余談だが彼自身の編曲物もいくつか世の中に出ていて、そちらの方から彼の名前を知った人も多いかもしれない。奇をてらわずに、いかにも「華麗なるピアノ」といった風情は、将来的にはもっと認知されるようになるかもしれない。

1986年にはデビュー50周年記念コンサートがあったようだが、もともと12歳でデビューした神童である。ラフマニノフの死後、最初に協奏曲のすべてを録音したピアニストであり、アメリカでは絶大な人気があって、グラミー賞なども受賞している。こうした業績の大きいピアニストが、全く軽く扱われてしまう日本の状況は、いったい誰が正していくのだろうか?
by masa-hilton | 2007-02-10 11:31 | 大ピアニストたち
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